晩秋 道東

「聖地 増田山」
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そこは憧れの場所。
「熊出没注意」の看板に身を引き締め広大な畜産試験場の中を登ることしばし、大展望が開ける。
根室本線 広内信号場と西新得信号場の間にある増田山トンネル真上の丘のてっぺん。狩勝峠のサミットへ雄大なカーブを繰り返しながら高度をかせいでゆく線路が一望できる場所。特急列車でさえ視界に現れてから、足元のトンネルに消えるまでに5分はかかるほど。

鉄道にまるで興味のない人を連れて来たくなる。絶景である、と言い切っていいと思う。
燃えるような紅葉は見えない、というか既に終わっている。いまは色づいた落葉松だけ。11月の声をきいた北海道は既に初冬の気配。落葉松林は遠望するとセーターの模様のよう、不思議とあたたかな感じがする。

華やかな特急列車の合間にローカルの気動車が1両で登って来た。
じきに長い冬が始まる。1ヵ月後にはこんなに気楽に増田山に立つことはできないだろう。
牛たちも牛舎に集められ、生の気配は間もなくこの視野から消えることだろう。

<1986.11.2 根室本線増田山トンネル上 上り普通列車>


「黄昏からの終着駅、そして明日への始発駅」
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増田山の数刻を堪能した後、釧路へ向かった。
夜のホームに再び立って鉄活動。
ファインダーを覗き込んで準備をするうちに、ホーム事務室から助役さんも出てきて迎えの定位置につく。

滑り込んでくるのは夕方札幌を発ってきた特急<おおぞら>
入れ違いに明日朝の札幌をめざす急行<まりも>
旅がひとつ終わり、ひとつまた始まる。

翌日、釧路近辺での撮影を終え、午後の<おおぞら>で帰京した。見送り人が多いのに驚き、発車ベルが鳴り止むと「蛍の光」が流れ出すのにもっと驚く。まるで船の出港ではないか。北海道の東のはずれは熱い町なのであった。

<1986.11.2 釧路駅>
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by y-gotosan | 2005-10-12 06:10 | 汽笛の風景
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